「客先のプロパー社員との距離感が難しい…」
「どうすれば、毎日もっと気持ちよく仕事ができるんだろう?」
「ただの”外部のヒト”扱いじゃなく、チームの一員として認められたい…」
SESエンジニアにとって、技術力と同じくらいかそれ以上に大切なのが客先での人間関係です。
特に、現場の指揮をとるプロパー社員との関係性は、あなたの働きやすさ、評価、さらにはスキルアップの機会まで、あらゆる面に影響します。
僕はもともと人付き合いが苦手な意識があったので、いつもこの「人間関係」というものに対して怖さを持っていました。
SESに限った話ではないですが、仕事・職場において人付き合いから逃げることは絶対にできません。これに失敗すると、途端に仕事がつまらなくなったり職場の居心地が悪くなってしまいます。
しかし、数々の失敗と成功を繰り返す中で、いつしかどんな現場でもある程度スムーズに人間関係を築ける「自分なりのコツ」が身についていました。
この記事では、僕がこれまでの経験で培ってきた「客先のプロパー社員と上手くやるためのコツ」をお伝えします。
小手先のテクニックだけでなく根本的な考え方から解説するので、少しでも日々の人間関係構築のヒントにしていただけたらと思います。
はじめに:客先常駐は「人間関係」が9割
スキルさえあれば、どこでもやっていける。
そう思っていた時期が、僕にもありました。
でも、それは大きな間違いでした。
SESという働き方の本質は「客先常駐」。
つまり、他社のオフィスで、他社の社員に囲まれて仕事をするということです。
そこでは、あなたの書くコードの美しさよりも、「この人と一緒に仕事がしやすいか?」という点が、実は何倍も重要視されます。
考えてみてください。
いくら腕が良くても、コミュニケーションが取りづらく、何を考えているか分からない人と、重要な仕事を任せたいと思うでしょうか?
答えは「No」ですよね。
SESの現場では、人間関係がこじれると、
- 必要な情報が共有されない
- 簡単な質問すらできなくなる
- 正当な評価を受けられない
- 最悪の場合、契約終了
なんてことにもなりかねません。
この記事を読んでいるあなたは、きっと今の現場の人間関係に、少なからず悩みや課題を感じたことがあるのではないでしょうか。でも大丈夫です。自分で言うのも恥ずかしいですが、とんでもないレベルでコミュ障だった僕も改善できたので、あなたも絶対に改善できます。
なぜ客先のプロパー社員との関係が重要なのか?僕が実感した3つのメリット
「人間関係が大事なのは分かったけど、具体的にどんないいことがあるの?」
そう思いますよね。
僕が実際に「プロパー社員と良好な関係を築けて良かった!」と心から感じたメリットを3つご紹介します。
メリット①:仕事が圧倒的にスムーズに進む
これが一番大きなメリットかもしれません。
プロパー社員と良い関係が築けると、報連相がしやすくなるのはもちろん、仕様の裏側にある背景や、プロジェクトの細かいニュアンスまで教えてもらえるようになります。
「これ、本当は〇〇さんの意向で決まった仕様だから、あんまり変えられないんだよね」
なんて裏話をこっそり教えてもらえたりすると、無駄な提案をしなくて済みますし、仕事の勘所も掴みやすくなりますよね。
結果として、手戻りが減り、仕事のスピードと質が格段にアップします。
メリット②:正当な評価に繋がり、単価アップも夢じゃない
あなたの現場での評価は、プロパー社員を通じて自社の営業担当に伝わります。
「〇〇さん、いつも助かってますよ」
「彼のおかげでプロジェクトが円滑に進みました」
こんなポジティブなフィードバックがあれば、自社営業も単価交渉がしやすくなります。
客先からの評価は、あなたの給料に直結する、最も分かりやすい指標なのです。
メリット③:本やネットには載っていない「生きたスキル」が学べる
プロパー社員は、その会社の文化、歴史、そして独自の業務知識を深く理解しています。
彼らと雑談したり、一緒にランチに行ったりする中で、
- その業界特有の専門知識
- 長年使われているシステムの「クセ」
- キーパーソンは誰か、といった社内政治
など、ドキュメント化されていない「生きた情報」に触れることができます。
これは、どんな技術書を読むよりも価値のある学びになることも少なくありません。
【大前提】プロパー社員と良好な関係を築くための3つのマインドセット
具体的なテクニックの前に、まずは最も大切な「心構え」についてお話しします。
このマインドセットがなければ、どんなテクニックも空回りしてしまうので、しっかり押さえておきましょう。
①「お客様」ではなく「ビジネスパートナー」と心得る
プロパー社員のことを「お客様」と過度にへりくだったり、逆に「発注元」として壁を作ってしまったりするのはNGです。
僕たちが目指すべきは、同じゴールを目指す「ビジネスパートナー」という対等な関係です。
「お金をもらっている側だから…」と卑屈になる必要はありません。
あなたはITのプロとして、技術や労働力を提供し、プロジェクトに貢献しているのですから。
対等なパートナーとして、敬意を払い、誠実に行動する。
この意識が、良好な関係の第一歩です。
②「郷に入っては郷に従え」を徹底する
プロジェクトには、その現場独自の「暗黙のルール」や「文化」が必ず存在します。
- チャットツールの使い方
- 勤怠報告のタイミング
- 休憩の取り方
- 服装の雰囲気
など、細かいことですが、これらを軽視してはいけません。
まずは周りをよく観察し、その現場のやり方に自分を合わせていく「柔軟性」が非常に重要です。
前の現場ではこうだった、というのは一旦忘れましょう。
郷に入っては郷に従う。これが客先常駐の鉄則です。
③ 感謝とリスペクトの気持ちを忘れない
当たり前のことですが、意外とできていない人が多いのがこれです。
プロパー社員は、あなたに仕事を教えたり、環境を整えたり、たくさんの時間と労力を割いてくれています。
そのことに対する感謝と、彼らの仕事に対するリスペクトの気持ちを、常に心の真ん中に置いておきましょう。
この気持ちがあれば、自然とあなたの言動は丁寧になり、相手にも良い印象を与えるはずです。
【実践編】明日から使える!客先のプロパー社員と上手くやる人間関係のコツ9選
ここからは、僕が実際に現場で試し、効果絶大だった具体的なコツを9つご紹介します
コツ①:気持ちの良い挨拶と「ちょっとした雑談」を侮らない
基本中の基本ですが、効果は絶大です。
朝は「おはようございます!」
帰りは「お疲れ様でした!」
これを相手の目を見て、少しだけ笑顔で言うだけで、あなたの印象は全く変わります。
さらに、業務が落ち着いているタイミングで、
「週末、〇〇に行かれたんですね!楽しかったですか?」
「そのキーボード、使いやすそうですね!」
といった、10秒で終わるくらいの雑談を振ってみましょう。
相手のプライベートに踏み込みすぎず、かつ興味があることを示すのがポイントです。
この小さなコミュニケーションの積み重ねが、心の距離をぐっと縮めてくれます。
コツ②:「報・連・相」は”少しやりすぎかな?”くらいが丁度いい
プロパー社員が一番不安に思うのは「SESの〇〇さん、今何やってるんだろう?」と、進捗が分からない状況です。
こちらが「順調です」と思っていても、相手は「本当に大丈夫か…?」と心配しているかもしれません。
だからこそ、報連相は「ちょっとしつこいかな?」と感じるくらいがベストです。
- 作業に取り掛かる前に「これから〇〇の作業を開始します」
- キリの良いところで「〇〇まで完了しました。今のところ問題ありません」
- 少しでも詰まったら「〇〇で詰まっています。少しお時間いただけますか?」
このようにこまめに報告・連絡・相談をすることで、相手は安心してあなたに仕事を任せられるようになります。
コツ③:質問の仕方ひとつで「デキるやつ」だと思わせる技術
「分かりません、教えてください」
これは最悪の質問の仕方です。相手の時間を一方的に奪うだけでなく、「自分で考える気がない人」というレッテルを貼られてしまいます。
デキるSESエンジニアは、質問の仕方が違います。
- まず自分で調べる、試す
- 何が分からなくて、どこで詰まっているのかを明確にする
- 自分なりの仮説や、試したことを伝える
- その上で、相手にアドバイスを求める
【良い質問例】
「〇〇の機能が動かないんですけど、どうすればいいですか?」
【悪い質問例】
「お忙しいところ恐れ入ります。〇〇の機能について、エラーが出て動かない状況です。
ドキュメントの△△を参考に、AとBの方法を試したのですが、同じエラーが解消されませんでした。
もしかして、××の設定が関係しているのでしょうか?ヒントをいただけると幸いです。」
このように質問すれば、相手は「ここまで自分で考えているなら」と、快く教えてくれるでしょう。
コツ④:ランチや飲み会には「まず1回」参加してみる
「飲み会とか苦手なんだよな…」
その気持ち、痛いほど分かります。
でも、お酒の席やランチでしか聞けない本音や裏話があるのも事実です。
業務中には見えない相手の意外な一面を知ることで、一気に親近感が湧くこともあります。
無理に毎回参加する必要はありません。
「まずは1回だけ」と決めて、勇気を出して参加してみませんか?
もし合わなければ、次からは断ればいいだけです。
僕もこの「1回参加してみる」を実践したことで、仕事が格段にやりやすくなった経験が何度もあります。
コツ⑤:相手の仕事をリスペクトし、具体的に褒める
プロパー社員の仕事をリスペクトし、良いと思った点は素直に口に出して褒めてみましょう。
「〇〇さんの資料、いつも分かりやすくて本当に勉強になります」
「先日の障害対応、〇〇さんの判断が早かったおかげで助かりました」
ポイントは「具体的に」褒めること。
お世辞ではなく、心から思ったことを伝えることで、相手は「この人はちゃんと見てくれているんだな」と感じ、あなたに好意を持ってくれるはずです。
コツ⑥:「できません」を言える勇気を持つ(ただし伝え方は気をつける)
何でも「はい、やります!」と安請け合いするのは、一見良いことのように見えて、実は一番危険です。
自分のキャパシティを超えた仕事を受けてパンクしてしまえば、結局はチーム全体に迷惑をかけてしまいます。
大切なのは、できない理由と代替案をセットで伝えることです。
【ダメな断り方】
「すみません、それはできません」
【良い断り方】
「ご依頼ありがとうございます。大変申し訳ないのですが、現在抱えているAのタスクが△日までかかる見込みのため、すぐには着手できかねます。Aのタスクを中断してこちらを優先しますか?もしくは、△日以降の着手でもよろしいでしょうか?」
このように伝えれば、相手も状況を理解し、調整してくれるはずです。
誠実な態度は、むしろ信頼に繋がります。ピンチはチャンスです。
コツ⑦:教えてもらったことはメモを取り、2回同じ質問をしない
これも信頼関係に関わる重要なポイントです。
一度教えてもらったことを何度も質問すると、「この人は話をちゃんと聞いていないな」と思われてしまいます。
教えてもらう際は必ずメモを取り、自分なりのマニュアルを作成するくらいの気持ちで臨みましょう。
その姿勢を見せるだけでも、相手からの信頼度は格段に上がります。
コツ⑧:小さな「ありがとう」を言葉と行動で示す
何かを教えてもらった時、助けてもらった時、「ありがとうございます」と感謝を伝えるのは当然です。
さらに一歩進んで、「行動」で感謝を示すことを意識してみましょう。
- 相手が忙しそうにしていたら「何か手伝えることはありますか?」と声をかける
- 共有のゴミ箱がいっぱいだったら、率先して片付ける
こういった小さな気遣いの積み重ねが、あなたの評価をじわじわと高めていきます。
コツ⑨:自社の営業担当を「最強の味方」にする
意外と見落としがちなのが、自社の営業担当との連携です。
- 「最近、〇〇さん(プロパー社員)が△△の資格に興味があるみたいですよ」
- 「チームで今、□□の技術に注目しています」
といった現場の生きた情報を営業担当に共有することで、営業はプロパー社員との会話のきっかけを掴むことができます。
営業が客先と良好な関係を築ければ、それは巡り巡ってあなたの働きやすさに繋がります。
営業担当を「自分の代わりに客先とコミュニケーションを取ってくれる味方」と捉え、積極的に連携しましょう。
【要注意】こんなプロパー社員とは上手く”距離”をとろう
ここまで良好な関係を築くコツをお話ししてきましたが、残念ながら、中にはどうしてもソリが合わない人や、理不尽な態度を取ってくる人がいるのも事実です。
全員と仲良くする必要はありません。
以下のようなタイプの人とは、無理に関わろうとせず、業務上必要なコミュニケーションに留め、上手く距離を置くのが賢明です。
- 高圧的な態度を取ってくる人
- 平気で丸投げし、責任を取らない人
- SESエンジニアをあからさまに見下している人
もし、どうしても業務に支障が出るレベルであれば、一人で抱え込まず、すぐに自社の営業担当に相談しましょう。あなたの心身の健康が第一です。
まとめ:人間関係は「信頼の貯金」。焦らず、あなたのペースで築いていこう
今回は、僕がSESの現場で学んだ「客先のプロパー社員と上手くやる人間関係のコツ」を9つ、ご紹介しました。
- 気持ちの良い挨拶と「ちょっとした雑談」を侮らない
- 「報・連・相」は”少しやりすぎかな?”くらいが丁度いい
- 質問の仕方ひとつで「デキるやつ」だと思わせる技術
- ランチや飲み会には「まず1回」参加してみる
- 相手の仕事をリスペクトし、具体的に褒める
- 「できません」を言える勇気を持つ(ただし伝え方が重要)
- 教えてもらったことはメモを取り、2回同じ質問をしない
- 小さな「ありがとう」を言葉と行動で示す
- 自社の営業担当を「最強の味方」にする
人間関係は、一朝一夕に築けるものではありません。
銀行にお金を預けるように、日々の小さなコミュニケーションを通じて「信頼の貯金」をコツコツと積み上げていくイメージです。
焦る必要はありません。
まずは明日、「いつもより少しだけ明るい声で挨拶してみる」
そんな小さな一歩から始めてみませんか?
この記事が、あなたの日常をより豊かで快適なものにする、きっかけになれば幸いです。